「徴用工」から「旧朝鮮半島出身労働者」に呼び方を変えたんだそうな

日本の統治下にあった朝鮮半島から日本に渡り、炭鉱や建設現場などで働いた人たちについて、日本政府は「旧民間人徴用工」や「旧民間徴用者」などとしてきた呼称を「旧朝鮮半島出身労働者」に改めたんだそうな。今朝のNHKニュースが言っていた。

安倍総理は今月1日の衆議院の予算委員会で呼称変更について言及した。前日の韓国大法院判決で日本側が敗訴したことを受けた対応とみられる。9日になって日経新聞がそのことを伝えたが、あまり注目されなかった。「それならやっぱりNHKだ」とばかり、官邸か自民党筋からNHKに対して何らかの「要請」があったのか、単に週末で政治絡みの記事がなかったのを埋めただけだったのか。NHKが今日になってこの新しくもないニュースを伝えた理由はわからない。

で、本題の呼称変更について。う~ん、国内的な受けはいいかもしれないが、はっきり言って愚策ではないか。韓国嫌いの人たちの溜飲は下げられても、日本の立場は良くならないか、悪くなりかねないと思う。

呼称変更は国際的に日本の印象を悪くする可能性あり

NHKは、呼称変更の理由を「すべての人が徴用されたわけではないことを明確にする必要がある」ためと伝えた。もちろん、「すべての人が徴用されなかった」のであれば、当然の話だが、そうではない。

「すべての人が徴用されなかったわけではない」という事実がある限り、韓国側は今回の呼称変更を日本政府のイメージダウンを図る国際的なロビイングに利用する可能性がある。曰く、「日本政府は徴用工という言葉を消し去り、『徴用がまったくなかった』と強弁しようとしている」と。

欧米の人権派は日本政府の言い分をよりも、韓国側の主張により賛同するんじゃないだろうか。何しろ、「旧朝鮮半島出身労働者」だけでは、間違ってはいないが、その中に徴用工がいたという含意がすっぽり抜け落ちてしまう。日本側が本来の徴用工についても反省する気がない、と言われれば、説得力のある反論はしにくい。(徴用工を含めて請求権問題は1965年に決着済み、ということと、歴史問題に反省の意を持つことは別次元の問題。「過去に対する反省の気持ちはあるが、請求権問題は決着済み」という主張でなければ国際的には通らないし、日本人の有り様としても正しくない。)

河野外相発言は、韓国の土俵に乗ることになりかねない

今回の呼称変更の理屈は、「日本政府が国民徴用令を朝鮮半島にも適用して現地の人を徴用したのは1944年。それ以前は、民間企業による『募集』や行政による『官斡旋』だった」ということのようだ。ちょっと不安なのは、国民徴用令以前の「募集」や「官斡旋」に実質的に徴用と判断される要素がなかったのか、ということ。これについては誰か詳しい人が教えてくれるだろう。

関連して気になったのは、9日の記者会見で河野太郎外相が大法院判決を受けて発した「原告は募集に応じた方で徴用された方ではない」という発言だ。これだけ聞けば、日本が大法院判決を受け入れられない理由は「原告が徴用工ではなかったから」と言っているように聞こえる。1944年以降の「徴用工」であれば日本政府も賠償に応じるべきだと考えているとか何とか、これも韓国側のキャンペーンに使われかねない。

 

徴用工から旧朝鮮半島出身労働者への今回の呼称変更。国内世論向けの内弁慶なのか、安倍さんや戦前の日本の植民地支配を否定する人たちへのお追従(ついしょう)か。外務省も悪手に乗ってしまった感じがする。

韓国の大法院判決に対する憤りは共有するが、一時の感情に任せて日本の不利になるような「独りよがり」に走るのはやめてもらいたい。

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